趨勢

右派自治政権が長年の悲願である政府与党の地位を手にした年、我が国は旧世紀時代から積み上げてきた天文学的金額の国債を返還するという国難に直面した。如何にして国債を返還すべきか、政府内では連日、昼夜を問わず会議が開かれ、議員たちが侃々諤々の議論を繰り広げた。結果、大方の方針が決まるまでにはそれほど時間はかからなかった。

 

 

 

結論は、所得税および法人税の大幅な増税。そして消費税の30%への引き上げ。他に公共事業費の引き下げ、議員給与の引き下げなどの歳出削減。これらを盛り込んだ政策が最終的な方針として決まった。増税に対しては反対論があったものの、最終的には反対派を押さえ込む形で議論が進められた。

 

 

 

しかし、この増税政策は野党および多数の国民から強烈な反発を招くことになる。特に消費税の30%引き上げを絶対阻止するため、野党は国会内で声を張り上げ、乱闘騒ぎを起こした。これにより審議は継続できなくなるばかりか、多数の負傷者も出し、混乱を極めた。

 

 

 

国会の外ではさらに深刻な事態が待ち受けていた。議事堂付近では増税に反対する市民らと警官隊が衝突し、逮捕者が多数出ることになる。この衝突は日を追うごとに激化し、市民も武装して警官隊に突撃し、双方に死傷者を出す事態になった。ついには、警官隊に爆発物を投げ込む市民も現れ、永田町は血の匂いで満たされていく。

 

 

 

こうした状況に至って、政府もようやく事態の深刻さを把握した。国会での審議は一時中断とし、議事堂を閉鎖。始めから政策を練り直した上で審議を再開すること、政策の練り直しには野党側の議員と有識者を招き、連日連夜に渡って議論した。早朝から夜は日付が変わるまで徹底した議論が行われたものの、話し合いは遅々として進まないまま、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月も終わりに差し掛かっていた。